私は”人間がフロンティアへの挑戦をやめた瞬間に、人間ではなくなる”と信じています。人類は、新大陸を目指す大航海、エベレストの頂上を目指した厳しい登山、南極点に向かった命がけの旅……、そういう不可能と思われる挑戦を続けてきた。人類の進化史とは、そういう冒険や挑戦の連続なんです。とりわけ科学技術は、冒険と挑戦の連続です。当然、失敗も多い。そのリスクをおそれずに挑戦し続けてきたからこそ、文明は進化してきた。「なんでいま月を目指さなきゃいけないんですか? 火星に行く必要あるんですか? お金のないときにそんなことやっても意味がないでしょ。アメリカがやっているんだから、任せちゃえばいいでしょ」という目先の損益にとらわれた偏狭な政治が、どれほど日本を衰退させてしまうか。さらに技術力の衰えが、結果的にどれほどの経済損失をもたらすことになるか。
人間が宇宙に出ることの意義は、従来とはまったく違う視点から地球を、そして人間を見ることにあるんです。新しい価値観や世界観を得ることができる……ということだと思うんです。人類は、宇宙に出て初めて、薄い膜のような大気と豊かな水、海に包まれた、まるでひとつの生命体のような地球の本当の姿を認識するようになった。そこで得られた叡智が、環境問題や生物多様性などを考える上でどれほど役立ってきたか。宇宙開発は単に人間の活動範囲が広がる、ということだけでなく、文化的なイノベーションをもたらす取り組みであり、その挑戦が広く国民を勇気づけ、自信をもたらしてくれる……。「はやぶさ」に日本中が喝采したことは、まさにそれを物語っています。「はやぶさ」によって日本人が得た活力や自信は経済の活力にも通じるものでした。また、子どもたちにも大きな夢、未来を与えてくれました。それは、子ども手当を何兆円バラまいても絶対に得られないことなんです。
67 notes (via mtakeshi & atorioum)