
夜、高いビルに忍び込んで風景を見る、というのをよくやった。
「忍びこむ」というのがポイントで、
新宿センチュリーハイアットは穴場でよく行った。
行ける一番高い階まで行き廊下のつきあたりのドアを開けると非常用の階段のある踊場で、地上百数mのそこにちょこんと座れる出窓があった。
お金もないしヒマだったのでそういう遊びをしていたのだ。
私はまだ学生で少し漫画も描き始めてはいたけど、
古着屋か雑貨屋の店員の方が将来の展望としては近かった。
金魚鉢のようなガラス窓の西新宿の高層ビル群の夜景を見ながら、
「きれい」とか「ロマンチック」という類いでなく「ぐらつくような不安」
「奇妙な居心地の悪さ」という感覚の方をより楽しんだ気がする。
よく男の子ともぐりこんだ割にはHなことは一度もそこでしたことがない。
手を握ったり、キスしたりとかも。
ただぼんやりと夜景を見てた。そして飽きて地上に戻るのである。